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インスタントラーメンに関するコラム

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2023.04.27

―WINA インスタントラーメンコラム―

栄養バランスが「食の安全」の秘訣

 前回のコラムでは「食の安全」とリスクの関係を解説しましたが、そもそも食が原因で亡くなる人は年間どのくらいいるのでしょうか。日本国内では病原微生物汚染や自然毒(フグ・キノコ・家庭菜園の植物など)による食中毒で年に数人が亡くなるとの報告ですが、それより遥かに多い年間数十万人の死亡原因がガンや脳・心血管疾患などの生活習慣病です1)。もちろん運動・睡眠や定期健診なども影響しますが、やはり生活習慣病の一番の原因は食、とくに栄養バランスの問題と考えると、食品成分自体が最も大きな健康リスクであり、生活習慣病予防と健康寿命延伸のカギはそこにあると専門家も唱えています2)
 ただ毎日の食生活の中で栄養バランスをきちんと摂り続けることは容易ではなく、管理栄養士さんが必ずついていて助言してくれればよいですが、そうもいきません。生活習慣病(とくに高血圧やガン)の予防のために最も気を付けるべき栄養成分はナトリウム(食塩相当量)と言われておりますので、インスタントラーメンがよく悪者にされますが、毎日レストランで味の濃い食事ばかり摂っていたら、塩分摂取量が毎日10gを超えていても気づかないでしょう。
要は、家庭調理や外食ばかりに頼ると栄養成分量を把握するのが困難な一方、加工食品の場合は栄養成分表示をあなたの専属栄養士さんだと思って、自身の健康上、気になる栄養成分の目標量を定めておけばよいのです。また最近の加工食品は、食品添加物・機能性成分をうまく利用したり、製造方法・包装材なども工夫して、減塩/糖質・脂質制限など健康志向の多種多様な商品が上市されておりますので、栄養成分表示を参考にすれば、栄養の偏りはかなり抑制可能です。
 例えば日本では、生活習慣病予防によいとされる食塩摂取の目標量は、18歳以上女性では1日6.5g未満、男性では7.5g未満とされています3)4)5)。WHOが推奨する食塩相当量は5g未満ですが、いまの日本の食文化を考慮すると現実的でなく、現在の平均摂取量との中間値を目標量に設定しています。また、ナトリウムの1日推定平均必要量を600㎎(食塩相当量1.5g:18歳以上男女共通)としています。
 ナトリウムについては、通常の食生活で不足することはないものの塩分も必要な栄養素です。多量の発汗、激しい下痢の場合には欠乏するし、熱中症対策としては水分だけでなく適度な塩分の摂取が必要です。つまり塩分は必要な栄養素であるものの、毎日の過剰摂取はNGと理解すればよいわけです。
 その意味でも、本来は子どものころから消費者教育としての「食品安全」を学び、コンビニなどで加工食品を買う時にも、栄養成分表示の食塩相当量を見て、カップ麺やスナック菓子を今週は何個までにしておこう、野菜サラダも一緒に購入してカリウムもしっかり摂ろうなどと、自分にとっての栄養バランスの目安がザックリと把握できるとよいですね。このような食についてのリスクリテラシー向上があれば、大人になってからも生活習慣病のリスク低減につながるのではないでしょうか。

         

※各国・地域によって基準は異なるかと思いますので、ご確認ください。

 

 

 

《参考文献》

1. 厚生労働省(2022) 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況(2023年4月10日取得, https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf)

2. 厚生労働省(2018) 広報誌「厚生労働」 『特集 自分で守り・つくるヒントがある! 考えてみよう 私自身の健康生活』(2023年4月10日取得, https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/03_01.html)

3. 厚生労働省(2019) 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(2023年4月10日取得, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html)

4. 日本高血圧学会(2014) 高血圧治療ガイドライン2014(2023年4月10日取得, https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf)

5. 公益財団法人 長寿科学振興財団(2021) 健康長寿ネット ナトリウムの働きと1日の摂取量(2023年4月10日取得, https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-na.html)

 

 

 

         

《執筆者:山崎 毅》

NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)理事長/獣医学博士

1983年東京大学農学部卒。1985年同大学院修了、同年湧永製薬(株)に入社し6年間米国にてサプリメントR&Dに従事。2011年SFSSを設立。

 

認定NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事

食生活ジャーナリストの会(JFJ)事務局長

一般社団法人消費者市民社会を作る会(ASCON)科学者委員会・事務局長

 

★SFSSウェブサイト https://nposfss.com/