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インスタントラーメンに関するコラム

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2023.11.29

―WINA インスタントラーメンコラム―

食品そのもののリスクを抑えるには

 本コラムではこれまで、特に消費者の方々がリスクを誤認しがちな食品添加物に比べて、食品そのものの健康リスクが案外大きなことをお伝えしております。昨今、厚生労働省の食中毒統計1)をみても、毎月各地で食中毒事故が発生していますが、これらは食品そのもののリスク管理を誤ったことで、食中毒細菌の増殖を招いたケースがほとんどです。食品そのものは無菌ではありません(ゼロリスクはない)ので、リスク管理を誤ると食中毒が発生します。また、人によっては卵・乳・小麦・えび・かに・落花生・そばなど、食品そのものが食物アレルギーの原因となり、健康被害が起こります。
 その反面、食品添加物が原因で食中毒事故が起こったという報告は、ここ数十年のレベルでほとんど耳にしません。「いやいや、添加物がたくさん入っているからがんになるヒトが多いのでは?」というご質問をよく受けますが、「添加物の摂取量とがんの発症に因果関係があるというたしかな科学的根拠はありますか?」とお聞きすると、週刊誌やネット記事に書いてありましたとおっしゃいます。がんの研究者たちが、食品添加物、また残留農薬や遺伝子組換え/ゲノム編集食品も含め、食品リスク全体を客観的に見て、私たちの身の回りで何が大きな発がんリスクかを詳しく報告しており、我々はそれを「発がんリスクの山」として右図のようにイメージ化してみました(データに基づいて山の高さを決めたわけではありません)2)
 これによると添加物や残留農薬はゼロリスクではないものの、食品そのものに起因する生活習慣と比べて、かなり低い山(=非常に小さな発がんリスク)であることがわかると思います。居酒屋でサラリーマンが、タバコを吸いお酒をのみながら、「添加物って体に悪いよね~」と言っていたら、「リスク感覚がかなりずれてますね?」と指摘したいところです。
 この図にもありますが、「お酒を飲み過ぎること」や「野菜をあまり食べないこと」など、生活習慣の乱れや栄養の偏りが生活習慣病のリスクを高めることは昔から知られています。しかし「超加工食品の食べ過ぎは生活習慣病になりやすい」などという論文報告があると、「添加物が多い食品は身体によくない」という誤った解釈の情報が横行します3)。加工食品であろうとなかろうと、栄養の偏りが生活習慣病のリスクを高くするわけで、一部の方が客観性の低い誤情報を意図的に流しているケースもあるので要注意です。
 ただ、インスタントラーメンを食する場合に、添加物などによる健康被害の心配はないものの、栄養の偏りにつながる食べ方が身体によくないことは当然です。本コラムの第2回(2023.4.27.)4)では、塩分の過剰摂取が高血圧のリスクを高めるため、加工食品に表示されている「食塩相当量」を確認して、各国・各地域の基準(例えば日本の1日あたりの摂取基準では、18歳以上女性は1日6.5g未満、男性は7.5g未満)をクリアすることをお薦めしました。具体的には、食品表示を確認して、必要に応じてラーメンのスープを残すなどで塩分摂取量を調整することができます。また脂質や糖質も短絡的に摂取量を抑えるのではなく、適正な摂取量を守る、すなわち栄養バランスを保つことが重要です。

《参考文献》

1. 厚生労働省食中毒統計資料(2023年11月20日取得, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html)

2. SFSS食の安全・安心Q&A (2017) 『食の放射能汚染について②』 (2023年11月20日取得, https://nposfss.com/qa/q_10/)

3. SFSS(2019) 食べてはいけない「超加工食品」実名リスト⇒フェイクニュース(レベル4)(2023年11月20日取得, https://nposfss.com/fact-check/shincho_20190131/)

4. 山﨑毅(2023)『栄養バランスが「食の安全」の秘訣』 WINAインスタントラーメン・コラム③  https://instantnoodles.org/column/column03.html

 

 

 

         

《執筆者:山崎 毅》

NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)理事長/獣医学博士

1983年東京大学農学部卒。1985年同大学院修了、同年湧永製薬(株)に入社し6年間米国にてサプリメントR&Dに従事。2011年SFSSを設立。

 

認定NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事

食生活ジャーナリストの会(JFJ)事務局長

一般社団法人消費者市民社会を作る会(ASCON)科学者委員会・事務局長

 

★SFSSウェブサイト https://nposfss.com/